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編集長のブログ

新年に想うこと


新年に想うこと

 

昨年、総選挙で安倍政権が勝利してから、これまで以上に「私」にとっての「戦争と平和」を考えることが多くなった。

そんなときに手に取ったのがヘルマン・ヘッセの「エッセイ集」である。ヘルマン・ヘッセは15歳のときから愛読し、彼の『デーミアン』『車輪の下』『シッダールタ』などは、ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』などと共に、若年の魂の大きな糧となった。ヘッセは第1次世界大戦と第2次世界大戦の渦中を生きたドイツの作家であり、しかも妻はユダヤ人。後年はスイスに移住し、市民権も得たが、ヘッセが高名になればなるほど、2度の大戦中の彼の言動に注目が集まり、幾度も、幾度も苦い思いを味わった。しかし、その度に彼の思索は深まり、彼と友情を結んできた人々との往復書簡は行間ににじむ相手に対する思いやりもふくめて感動的である。

 

下記引用文で、ヘッセが「政治的」という言葉で書いている含意は、イデオロギーや宗教、政党色に本人はそれと気付かずに、まるごと熱狂し、支配されている状態を指している。そのような熱狂のなかでの、自己正当化、自己の行動の動機付けを行う人々が大勢いた時代の最中であった。

 

トーマス・マンはヘッセの大事な友人であり、当然上記の人々とは違う。それでも困難な時代状況のなかで、意見の相違はあった。

 

トーマス・マン宛書簡より(1936年2月13日)

「私は、これまでと同様、生活全体や人類全体が政治化されるべきだとは考えておりませんし、死ぬまで自分は政治化されまいと努めるでしょう。武装せず、殺される人間もいなくてはならないのです。

(2010年11月「ヘルマン・ヘッセ全集」第8巻エッセイ全集)臨川書店

 

この言葉は、戦争を放棄した「日本国憲法第9条」を支持する覚悟と同じではなろうか。少なくとも、私自身はずっとそのように考えてきた。

 

しかし、2015年現在。来るべき「戦争」に備えて「安倍政権」は必死になっている。彼らの思い込みのなかで過去の戦争は「戦争阻止の教訓」としては生かされず、「戦争が起こった場合」の戦略として生かされる。

冷静に考えれば、まるでブラックユーモアである。しかし、そんなユーモア感覚を彼等に期待しても無理。総理は「真面目に、真剣に熱狂」している。

ならば、私たちはそんな現在、どのような立ち位置を安倍政権とこの時代にとるべきなのだろうか。“理想”はヘッセの生きた時代に限らず、これまでの歴史のなかで現実から嘲笑され続けてきた。しかし、よく考えてみよう。そのような一握りの理想と自らの“良心”に正直であり続けた人々がいたからこそ、過去の大惨劇を幾度となく乗り越えて、不完全ながらここまできたのだ。

 

確かに、革命を起こしして「自らの理想の世の中」を具現化しようとする考え方は未だ現在である。革命とまではいわずとも「アラブの春」も「イスラム国」もそのような考えで実行された。このふたつを同列に並べるのはいささか抵抗もあるが、武器を持つか、多数の熱狂に頼るかの違いであろう。

 

また、総理は日本国憲法の「自衛のための戦争まで禁じてはいない」ということを自己正当化の骨子に据えている。それだから、「攻められる前に備えようと」している。その背景にはまだ、まだ軍事力が幅を利かす世界の現状がある。しかし「武器輸出」まで税金を使うとなると、これまでの日本の「平和国家」たる原則はどうなるのか。そこまで踏み切れば、もう、現状追認でどうとでもなってしまう。そうしたなかで「日本は世界の中心で光輝く国」になれるのか。

道義を無視して、ただ経済と覇権によって、この国に住む人々が幸福になれるのか。総理のなんでもありの二重基準によって、人々の表情は険しく、悲しいものになっていきはしないか。

 

いつか、「地球連邦」の時代が到来したら、我々がこの時代にいつ、どのような歴史を記したのか、判然とする。だか、そのときでは遅い。だから、せめて目前にある「集団的自衛権の行使容認」の反対。「特定秘密保護法」反対ぐらいは表明しなくてはと思う。それを「政治的行動」とは、ヘッセも言わないだろう。

(2015年「2050年メールマガジン」原稿より)

 


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