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編集長のブログ

桜の日々


この数ヶ月人に会う機会が多かった。仕事がらみの人、そうでない人、様々である。
4月には、47年ぶりに高校時代の同級生に会った。脳性小児麻痺という障害を抱えながら普通科の高校に入学したTさんだ。
私とTさんは高校の図書館によく通っていた。15・6歳の少女には早すぎる本ばかりを手にとって読んでいた気がする。キルケゴールもサルトルもルソーも主だった哲学者の著作はこのころ読んだ。当時はやたら小難しく思えた本が、(なんだ、この程度)などと思ったり、簡単に理解できたと考え方が、(浅かったなぁ)などと思うのは後のことで、当時の少女にはすべてが新鮮だった。なんという幸福な時代か、ボードレールもランボーも詩人たちはみんな、地続きの地平に生きていて、なおかつ友達だった。

そして、17歳のとある日のこと、私のなかに居座った未来からの使者は、私に旅に出ることを要求し、私は学校を辞めて日本全国を放浪することにした。
そのころのTさんの姿をよく覚えている。

彼女は毎週土曜日に学校の中庭で行なわれるフォークダンスにも積極的に参加し、皆と同じに生きようとしていた。そして私は皆と違う道を選んだ。

ふと思う、私が突然学校を辞めたとき、彼女はなんと思ったのだろうか。
そのことは、聞きそびれた。47年ぶりに出会ったTさんはとても元気だった。
そして、47年間の困難な人生の軌跡を一生懸命語ってくれた。
話の内容は(えぇ!)と思うことばかりだったが、一旦彼女の口から言葉となり解き放たれると、重くならず、暗くならず、たびたび笑ってしまった。

五体満足で車椅子の操作の仕方さえ知らぬ普通の人間にとって、彼女の日々の不自由とは、何と個性的で創意に満ちたものだったろう。その日々の記録を彼女はパソコンで文字にして送ってくれた。

ひとつ、ひとつの、たとえば「坂道を車椅子で登る」という行為の達成に「ヤッター!」と彼女は書く。「親切な人に助けられたときには」、「うれし!」と書く。
その素直な言葉から彼女の肉声がそのまま、再会したときの顔中の笑顔とともに甦ってくる。

温暖の差が激しく、散りそびれた桜が帰宅するバスの車窓から見えた。
「桜の日々」の「最後の桜」かなと思う。(arc編集長・東郷禮子)


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